PH9.0

20代の男の日々の雑記です。

穴掘り男

男は家の地下に穴を掘った。その穴は外からは密閉されており外界からの接触は断つことができる。空調設備はつけているため中は涼しい。また、電気機器も冷蔵庫も食糧も揃っているため食事にも困らない。トイレとシャワーだけは地上の家に出る必要がある。

その穴で男はひたすら音楽を流して、ネットをした。彼だけの空間だった。断絶された空間。誰の干渉を受けることのない永遠の時間。彼は人生で初めて真の自由を得た。彼はネットを使い世界のいろいろな音楽を聴いたし、色々なニュースを読み、情勢に詳しくなった。本も持ち込んで丹念に読み込み、文学や芸術への造詣を深めた。また、時々、空いたスペースで筋力トレーニングを行い、強靭な肉体を手に入れた。その日々は彼には至福の日々だった。脳には常にオキシトシンが流れていた。

その時期、外ではコロナ騒ぎがあり、社会は騒然とし、中には在宅で鬱になる人もいたが、彼には無縁であった。

彼は地下で幸福であり、知識もバージョンアップした。彼は今後も地下で生き続ける。この空間で彼はオキシトシンを垂れ流して、死んでいくだろう。